数年前から注目されている「働き方改革」。宿泊業のため24時間体制で人員を配置するホテル業界でも、働き方の見直しが望まれます。今回は、ホテル業界で転職活動を考えている方に向けて、ホテル業界における働き方改革について、現在の課題、改善点についてご紹介します。
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目次
働き方改革とは?
「働き方改革」は、働く人々が「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにするための改革」です。すべての労働者を対象にした社会全体での働き方改善ともいえるでしょう。
2018年には「働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が成立、2019年4月から順次施行されています。
働き方改革が目指す、日本の労働環境における課題の解決としては「長時間労働の是正」「雇用形態による格差の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」などがあります。
ホテル業界における働き方の課題
日本のホテル業界でも、スタッフの労働環境については長らく、以下のような点が課題とされてきました。
①人材不足および高い離職率
ホテル業界は、長年人材不足の傾向があります。
人材不足の大きな要因のひとつとされているのが「高い離職率」です。厚生労働省『令和3年雇用動向調査結果の概要』によると、令和3年1年間の宿泊・サービス業の離職率は25.6%。全産業の中で最も高い結果でした(全産業の平均離職率は13.6%)。
離職率が高いと、スタッフが定着せず、サービスの質の向上も望めなくなります。
②労働時間が長い/不規則な傾向
ホテルは繁閑の差が大きい業界。繁忙期や人材不足の時など、業務量が増えて残業が発生し、長時間労働となってしまうことも、長年の課題です。
さらに、ホテルは基本的に24時間体制・年中無休なので、部署によっては、早朝・深夜勤務も含めたシフト制となります。数時間の休憩を挟んで再び出勤する「中抜け勤務」になる場合もあり、不規則な労働形態がスタッフの負担を大きくしていることも、多くのホテルで課題感を持たれています。
③休日が少ない/取りづらい傾向
ホテルによっては、スタッフの休日が少ない・取りづらいという課題もあります。要因としては、やはり人材不足によるところが大きく、スタッフ1人あたりの負担が増え、有給休暇も取得しにくくなってしまうのです。
厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」によると、令和3年1年間で、宿泊・サービス業の年次有給休暇取得率は労働者1人平均で44.3%。全産業で最も低い取得率となっています(全産業の平均は58.3%)。
④雇用形態による賃金・待遇の格差
同じ仕事内容であっても、正規雇用か非正規雇用かによって賃金や待遇に格差が生じていることも、ホテル業界の課題です。雇用形態による格差もまた、離職率の高さに結びついていると指摘されています。
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ホテル業界における「働き方改革」のポイント
では、これからのホテル業界ではどのような「働き方改革」が求められるのでしょうか。
①多様な人材の活用
まず、多様な人材を活用することが挙げられます。
少子高齢化が加速する現在、シニア層、主婦/主夫層、外国人労働者の方を積極的に採用していけば、ホテル業界の人材不足解消につながります。人材不足が解消されることで、長時間労働の解消、有給取得率の上昇も見込めます。
また、産前産後休業、育児休業、介護休業、時短勤務の取得推進など、子育て中や介護中のスタッフも継続的にキャリアを積めるような風土・体制づくりも望まれます。
②業務の効率化や見直し
業務の効率化や見直しも重要です。
具体的には、
・お客様へのサービスを含む業務内容、オペレーションの見直し
・マルチタスク化(スタッフの業務の幅を広げる)
・IT化、DXの導入
などが挙げられます。
お客様視点で重要度の低いサービスを思い切って削減する、人手が必要なサービスはスタッフ全員が対応可能にする、コンシェルジュ機能が付いたタブレットを活用するなどの取り組みを積極的に行うことで、長時間労働解消や業務負担削減など働きやすい職場環境の実現が期待されます。また、お客様へのおもてなしの質を高めることにもつながります。
③勤務体制の見直し
勤務体制の見直しも望まれます。
働き方改革関連法案では、企業に対して、就業時刻から次の始業時刻までに十分な休息時間として最低でも11時間空ける「勤務間インターバル制度」導入の努力義務を定めています(労働時間等設定改善法)。
シフト制で早朝や深夜の勤務もあるなど、不規則な労働時間になりがちなホテル業界においても、近年は、スタッフの休息時間を十分に確保すべく、シフトの人員数や時間帯を見直す施設が増えています。
休息時間を十分に確保することによって、スタッフの心身の健康維持やモチベーション向上、離職率の低下などが期待できます。勤務体制を見直し無理のないシフトを組むためにも、人材確保や業務効率化が求められるでしょう。
④年次有給休暇取得の推進
スタッフが確実に有休を取れる体制を作り、年次有給休暇の取得率を上げていくことも必要です。
働き方改革関連法案では、企業に対して、10日以上の有休を付与される全ての労働者に、最低5日間の有休を取得させることを義務付けています。ホテル業界でも、ホテルが主体的になってスタッフの有休取得を推進し、有休が取りやすい環境を整えていくことが求められます。
スタッフが一斉に休めるよう定期的に「休館日」を設けているホテルもあります。
⑤同一労働・同一賃金の導入
同一労働・同一賃金の導入も必須といえます。
令和3年に観光庁が作成した「宿泊業の現状について」によると、宿泊業界では、雇用者数の約54%が非正規雇用者です(そのうち、女性が占める割合は66%)。
これまでのホテル業界では、業務内容がほぼ同じであっても、雇用形態が正規であるか非正規であるかによって、スタッフ間で給与、賞与、福利厚生などの待遇に格差が生じがちでした。しかし、2020年4月施行の改正労働者派遣法、改正パートタイム・有期雇用労働法では、企業内における正規・非正規間の不合理な待遇差が禁じられました。
同一労働・同一賃金を導入することで、正規・非正規の格差解消はもちろん、仕事に対するモチベーションの向上、人材不足の解消なども期待されます。
働き方改革に積極的に取り組むことにより、ホテルの「おもてなし」や「サービス」の仕事に意欲を持つ方の継続的な勤務が実現し、ホテル業界の活性化にもつながるでしょう。
転職活動では、ホテル業界の「働き方改革」にも注目しよう
今回は、ホテル業界での転職を考え中の方に向けて、ホテル業界の労働環境の課題や「働き方改革」について紹介しました。
ホテル業界の「働き方改革」では、“働きやすい環境の実現”と“生産性や利益の確保”の両立が重要となります。ホテル業界で転職活動を行う場合は、どのような「働き方改革」を行っているのかという点にも注目してみてはいかがでしょうか。
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